Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
「自分だって」
「それは、欣しいさ、欣しいからおれは、お通さんみたいに隠したりなんかしないさ。――大きな声でいってみようか、おらア欣しいっ!」
そして、手足を踊らせて、
「でも、もしかして、お師匠様がいなかったらつまらねえな。先へ行って見つけてみるよ、ネ、お通さん」
と駈け出した。
柑子坂を、お通は後から降りて行った。先へ駈けて行った城太郎以上に、心は坂の下へ飛んでいたが、かえって足が急がないのである。
(――こんな姿で)
お通は血の出ている自分の足へ眼を落し、土や木の葉によごれている袂をながめた。
その袂にたかっていた枯れ葉を取って、指先に弄びながら歩いてゆくと、葉に巻かれていた白い綿の中から、不気味な虫が出て来て手の甲を這った。
山の中で育ったくせに、お通は虫が嫌いだった。ぎょっとして手を振り払った。
「おいでようっ、はやく。――なにをのそのそ歩いているのさあ」
坂の下から城太郎の勢いのいい声だった。あの元気のいい声の様子では、さては、武蔵が見つかったものとみえる。――お通は彼の声占からすぐ察して、
「アア、とうとう」
きょうまで自分というものを、ふと心のうちでなぐさめ、遂に届いた一心に対して、我へともなく、神へともなく、誇りたかった。