Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate

Aozora Bunko

五

ずるりと這い出して来たからであった。

五

ぐ……と生唾をのんで又八はなおも後へ摺り退がった。腹の底から驚きを感じると声も出ないものだ。ただ眼のみ大きくみひらいて、目前の事実に茫失した。

「……ひゅっ……ひゅっ……」

彼は、何かいおうとするらしい。彼とは顎の半分ない武者修行である。完全に死んでいると思っていたこの男は、まだ生きていたのだ。

……ヒュッ、ヒュッと断れ断れに彼の呼吸が喉で鳴るのである。唇は黒く渇いてしまって、そこから言葉を吐くのはもう不可能な業であった。それを必死に一言でもいおうとするので、呼吸が割れた笛の鳴るような音を出すのだった。

又八が驚いたのは、この男が生きていたからではない。胸の下に縛りつけられている両手で這って来たからだ。それだけでも、驚くに足る人間の死力であるのに、その縄尻の巻きつけてある何十貫もあろう巨石が、この瀕死の傷負が引っ張る力で、ズル、ズル……と一、二尺ずつ前へ動いて来たからである。

まるで、化け物のような怪力だ。この工事場の労働者のうちにも、ずいぶん力自慢があって、十人力とか二十人力とか自称している天狗もあるが、こんな化け物は一人もいない。