Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
三
いるほど、そのつよい低声が、武蔵の耳以上へ滲み徹っているか否かはわからなかった。
なぜならば、よく頷いてはいるくせに、彼の眸は、あらぬ方へ行っているからである。愛しあっている者同士が、ことばを奏であいながら眼を反らしているといったような――ああいう情景とはまるで違ったもので、ひと口にいえば、彼の今持っている眸は、無色無熱の火であった。そこから一角の焦点へ向って、かちっと烙きついたまま、眼じろぎもしないのである。
朱実には今、そういう相手の眼を怪しむ認識すら持てない。自分だけの感情の中で、独り問い答えながら突きつめては唇へ咽び出すのだった。
「……ああ、私はもう、これであなたにみんないうことをいってしまった。秘していることはなにもない」
と欄干へのせている胸を少しずつ寄せて来て、
「――関ヶ原の戦から、もう五年目になるでしょう。その五年のあいだに、私という者は、今すっかり話したように、境遇も、体も変ってしまったんです」
……よよと、啜り泣いて、
「けれど――いいえ――私はちっとも変っていない。あなたを思っているこの気持は、みじんも変って来てはおりません。