Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
三
「おういっ、娘や」
八十馬は、猟犬のように、萱の波を躍って追う。
裂けたる鬼女の口に似ている夕月が、ちょうど鳥部ノ山の辺りに見える。折から生憎、陽も落ちかけて、この辺りは人も通らない。もっとも、そこから二町ほど彼方を、一群れの人間が、とぼとぼ山の方から降りて来るのはあったが、朱実の悲鳴を聞いても、こっちへ救いに駈けつけて来ようとはしなかった。――なぜならばその人々は皆、白い裃を着、白い緒の編笠をかぶり、手に数珠を持って、まだ野辺の送りをすまして来た涙が干かないでいる人たちであったから。
三
背なかを、どんと、突きとばされたのだ。朱実は勢いよく、萱の中へ仆れてしまう。
「あっ、御免御免」
ふざけた男もある。自分で突きとばしておいて、八十馬はこう謝りながら、朱実の体へのしかかり、
「痛かったろ」
と、抱きすくめた。
その髯づらを、朱実は、くやしまぎれに平手で打った。ピシャピシャと二つも三つも打った。けれど八十馬は平気なものなのだ。かえって、この男はそれを歓ぶかのように、眼をほそめて打たれているのだから始末にこまる。
従って、彼女を抱きしめている手は離しッこない。