Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
三
三
又八は、土のついた青銭を、掌のうえでかぞえた。西瓜売りにわたして一個の西瓜と交換した。それを抱え込むと、またしばらく、石に倚りかかったまま、ぐんなり俯向いているのである。
「げ……げ……」
突然、片手をつくと、草の中へ牛みたいに唾液を吐いた。西瓜は膝から転がり出している。それを取ろうとする気力もないし、食べようという気で買ったわけでもないらしいのだ。
「…………」
にぶい眼で、西瓜をながめていた。眼は虚無の玉みたいに何の意力も希望もたたえていない。呼吸をすると肩ばかりうごいた。
「……畜生」
呪う者ばかりが頭脳へ映ってくる。お甲の白い顔であり、武蔵のすがたであった。今の逆境へ落ちて来た過去を振顧ると、武蔵がなかったらと思い、お甲に会わなかったらと彼はつい思う。
過ちの一歩は、関ヶ原の戦の時だ。次に、お甲の誘惑だ。あの二つのことさえなかったら、自分は今も、故郷にいたろう。そして本位田家の当主になって、美しい嫁をもち、村の人々から、羨望される身でいられたに違いない。
「お通は、怨んでいるだろうなあ……。どうしているか」
彼の今の生活は、彼女を空想することだけが慰めだった。