Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
微笑
一
彼女の髪には、元日の化粧いもなかった。着物もみだれ、足も素はだしなのである。
「……あっ?」
眼をみはって、武蔵は、意味なくそう叫んだが、さて、誰なのか、覚えはあるが、急には思い出せなかった。
朱実は、そうでなかった。自分ほどではなくても、その何分の一でも、武蔵も自分を考えていてくれたことと信じている。いつの間にか、多年の間にそう自分だけで信じて来ている。
「わたしです……たけぞうさん……いいえ武蔵様」
下着の袖を裂いた紅い小布を手にしながら――怖々と寄って、
「……眼を、どうかなすったんですか。手でこすると、なお悪くするでしょう。これでお拭きなさいませ」
武蔵は黙って好意をうけた。紅い布で片眼を抑えると、また、朱実の顔をしげしげ見直した。
「お忘れですの?」
「…………」
「わたしを」
「…………」
「わたしを」
手応えのない相手の無表情な空ろへ向って、彼女の押詰めて来た切実な気持は不意なよろめきを感じた。傷だらけになった魂にも、これだけは確とつかんでいたつもりだったものも、自分だけで作っていた幻像に過ぎなかったことを、ふと覚ると、胸先へ、血のかたまりのようなものがこみ上げて来て、