Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
今の世の中ほど浮浪人が多い社会はない。それは何が生んだかといえば、戦だった。戦によってぐんぐん地位を占めてゆく者も多い代りに、芥のように捨てられてゆく人間の数も実に夥しい。これが次の文化の手枷、足枷となるのもやむを得ない自然の因果といえよう。そういう浮浪の徒が、国宝の塔を焚火で焼く数よりは、戦が、意識しつつ、高野や叡山や皇都の物を焼いたほうが、遥かに大きな地域であった。
「……ほ。洒落たものがあるぞ」
又八はふと横を見てつぶやいた。ここの炉も床の間も、改めて見直せば、元は茶屋にでも使っていたらしい閑雅な造りなのである。そこの小床の棚に、彼の眼をひいた物がある。
高価な花瓶や香炉などではない。口の欠けた徳利と、黒い鍋だった。鍋には食べ残した雑炊がまだ半分残っているし、徳利は振ってみると、ごぼっと音がして、欠けた口から酒がにおう。
「ありがたい」
こういう場合、人間の胃は、他の所有権を考えている遑はない。徳利の濁り酒をのみ、鍋を空にして、又八は、
「ああ、腹が満った」
ごろんと手枕になる。
トロトロと炉の火もとに眠りかける。雨のように野は虫の音に更けてゆく。