Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
Leggi 三国志(五) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N1. Tocca una parola per il significato.
N1 · avanzato · kanji e kana moderni · 325.249 caratteri · 653 schermate
二
二
母公にとっては、孫権よりも、その妹のほうが、可愛くて可愛くて、たまらないものらしいのである。
また、なんといっても、このわがままな老女性には、敵国を謀るなどという問題には興味もなかった。それよりは、ひとり息女の盲愛のほうが、遥かに遥かに大きかった。
だから、かりそめにも、その息女を生贄として遂げようとする謀略と聞いては、それが呉国の為であるとかないとかなどは問題でなく、頭から老いの感傷と怒りをふるわせて、
「なりません、なりません。誰がなんといおうと、むすめの一生を誤まらすようなことは、わらわの眼の黒いうちは断じてなりません。そんなことをもし周瑜がすすめたのなら、周瑜は自分の功のために、主家のむすめを売る憎い人間じゃ。わらわが命じる。すぐ周瑜を斬っておしまい!」
という権まくであった。
(手がつけられない――)
と、痛嘆を嚥んでいるものの如く、孫権はただ老母の血相に黙然としていた。
しかも喬国老までが母公と同意見で、
「いやしくも呉侯呉妹のご兄妹が、婚礼に事よせて、玄徳を殺したなどと聞えては、たとい天下を取ろうと、民心は服しまい。呉の国史に泥を塗るだけじゃ」