Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
お通は身をすくめて、木の根にしがみついた。足をふみ辷らすと体は振子のように崖へ伸び、烈しく左右へ振り廻された。顔のうえ胸の中へ、土や小石がざらざらと崩れてくる。梅軒の巨きな眼と、白刃が絶えずその上にあった。
「ばか、ばか、逃げる気か。――もうそこから下は、渓川の絶壁だぞ」
ひょいと、前をのぞくと何丈か真下に、残雪の間を裂いて走っている水が青く見えるのだった。――お通はそれに救いを感じても恐い気はしなかった。ひらりとすぐ身をその宙へまかせる機を持っていた。
死を感じると、死の恐さよりもおそろしい速さで、彼女は、武蔵がどこにいるかを考えた。いや自分の記憶と想像力のおよぶかぎりの武蔵の幻像が、総毛立ッた頭脳のうちで、暴風雨の空の月みたいに描かれた。
「――親方ア、親方あ」
どこで呼ぶのか、谷間の谺が、その時、梅軒を、横へ反らせた。
六
崖の上に人間の顔が見えた。二、三人の男どもである。
「親方あ」
と、その顔が、てんでに呼ばわるのだった。
「なにをしてるんで。――はやく先へ急いでおくんなさい、今、四軒茶屋のおやじに訊くと、夜明け前の暗いうちに、そこで弁当をこさえさせて、甲賀谷のほうへ走って行った侍があったてえことですぜ」