Classici giapponesi con furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Leggi 三国志(一) (さんごくし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 309.839 caratteri · 622 schermate
……いいえ、それでは、逆しまでした。大人のお胸を訊く前に、わたくしの本心から申さねばなりません。――私は常々、大人のご恩を忘れたことはないのです。十八の年まで、実の親も及ばないほど愛して下さいました。歌吹音楽のほか、人なみの学問から女の諸芸、学び得ないことはなに一つありませんでした。――みんな、あなた様のお情けにちりばめられた身の宝です。……これを、このご恩を、どうしてお酬いしたらよいか、貂蝉は、この唇や涙だけでは、それを申すにも足りません」
「…………」
「大人。……仰っしゃって下さいませ。おそらく、あなたのお胸は、国家の大事を悩んでいらっしゃるのでございましょう。今の長安の有様を、憂い患らっておいでなのでございましょう」
「貂蝉」
急に涙を払って、王允は思わず、痛いほど彼女の手をにぎりしめた。
「うれしい! 貂蝉、よく云ってくれた。……それだけでも、王允はうれしい」
「私のこんな言葉だけで、大人の深いお悩みは、どうしてとれましょう。――というて、男の身ならぬ貂蝉では、なんのお役にも立ちますまいし……。もし私が男であるならば、あなた様のために、生命を捨ててお酬いすることもできましょうに」