Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵 (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 185.809 caratteri · 369 schermate
顔も肩も、砂だらけになって、婆は這い起きた。
そして腹立たしげに、権叔父の姿を捜していた眼が、突然、鏡のように大きくなったと思うと、
「馬鹿っ、馬鹿っ」
と連呼して、
「気が狂うたかっ、どこへ行くのじゃっ、権叔父っ」
と彼女までが、発狂したのではあるまいかと疑われるような血相で、権叔父の駈けて行った海へ向って、彼女も駈け出して行ったのである。
――見ると。
権叔父はもう海へ入っていた。このあたりは至って遠浅なので、まだ水は脛のあたりまでしか浸っていないが、夢中になって沖へ沖へと駈けてゆくので、その飛沫は、駈けてゆく彼のすがたを包み、真っ白に煙っている。
ところが――その権叔父の前にも、もう一人の若い女が、凄まじい勢いで、海へ駈けこんで行くではないか。
初めに、権叔父がその女を発見した時は、女は松原の蔭にたたずんで、じっと海の碧さを見つめていたが、アッ――と思った時は、黒髪をちらしているその姿は、もう飛沫を蹴って、真一文字に海へ駈けていたのであった。
だがこの浦は前にもいったとおり五町六町の沖まで潮が浅いので、先に走ってゆく女の姿も、まだ脚の半分ほどしか隠れていない。