후리가나로 읽는 일본 고전
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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
牧 逸馬의 世界怪奇実話(せかいかいきじつわ「じょぶん」)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 251,305자 · 498화면
と、二時十七分、タイタニックが船首を先に海底へ突入した三分前に、フィリップスは最後の打信盤を叩いて、
「S――O――!」
それ限りだった。急な沈黙がタイタニックを捉えた。ダイナモが水に漬かって、完全に無電能力を奪ったのである。
終始このタイタニック号の無電室に、薄い影のようにぼんやり坐っていた女の姿があった。三等から来た婦人客だった。彼女はショウルで肩を包んで、子供のように歔り上げながら、SOSを打つフィリップスの指先を、泪で曇った眼で凝視め続けた。何国の人間か、どんな女だったか、フィリップスもブライドも二時間の余もそうして同じ部屋に居て振り返る暇さえなかった。死んだか助かったかそれも判らない。只、坂のように傾斜する無電室、その一隅の椅子にじっと腰掛けて泣いている一人の女を古い映画の閃過のように見た丈けだ。
フィリップスとブライドが無電室を跳び出して見ると、船首から船体の半ばまで水に突っ込んで、最上層のボウト甲板さえ浪に洗われている。二人は上甲板の高級船員室の屋根に這い上がって、沈没と同時にブライドは其処から一度海に呑まれた。其の時、フィリップスは未だ屋根に掴まっていたが、ブライドは顛覆した救命艇と一緒に海中に捲き込まれて、幸運にも其のボウトに掴まって直ぐ浮かび上った。