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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

現に先き頃も、分別ありげな隊長にひきいられたボーイスカウトとやらの一団が、煮炊きにでも使うことか、山のように伐り集めた俺たち仲間を、キャンプ・ファイアとか称して、惜しげもなくボーボー燃やしては、夜ふけまで歌い騒いだ顛末を、塒を追われて、充血した目の茅潜りの小母が、くやしがって、「教育なんて怪しいものだね」と、俺に訴えたことだ。

ただしここで、誤解をしないように願いたい、というのは、学術上の研究とか、あるいは人助けとかいった、立派な目的のためなら、俺たちは喜んで、身命を捧げる覚悟は持っているつもりだし、又そうした実例も決して稀な事ではない。ただ生物として、天賦の貴い生命を、むざむざ犬死させたくない、種族を絶滅させては申しわけない、というそれだけの話なのだ。

――そう言えば、こんな事もあったナァ。あれは……と、早いもので、もう五十年近くも前になろうが、ある夏、この山裾に近い伊那地方の小学校の一団が、ついこの尾根一つ向うで、折悪しくも暴風雨のため遭難した。それも、あろう事か、あったら三十幾人という双葉の生命が、先生もろとも、一挙に山上の露と消えてしまったのだ。