轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

九 鐘釣温泉

九 鐘釣温泉――その二、夏から秋にかけて

こうした厳しい山間で落ち着ける処は、やはり温泉に越すものはあるまい。この大地の至深から地表に湧き出る、熱い不思議な流動体の手で、人間は「まるごと」赤児のように、自然に抱きとられる。温泉の使命は、自然の博大甚深なる愛の、その涙もろい一面を、ありのまま眼前に流露させるところに存する。彼はかくて長い暗黒の旅を経て、ここにその恵み深い姿を現わしているのだ。温泉は人にはいられねばならぬし、人は温泉にはいらねばならない。

祖母谷温泉が無人の境になってから、この鐘釣が、黒部谷では人のまいる温泉の奥之院になっている。その資格は充分にある。浴客の多くは、さすがけわしい長道中に僻易して、少し谷の奥過ぎると思うらしいし、清純な自然の姿に慕いよる登山の客は、も少し上流にあったら……などとも思う。しかしこの辺が、まず調和のとれたところだろう。それだけに、深山の気と塵界の匂いとが、奇妙に交り合っている。位置は谷の中流、黒部大峡谷の中心に近い地点にあるのに、海抜高距は僅か四百メートルそこそこに過ぎない。――いかに谷の底深いかが解ろう。