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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
高山蝶発見物語 田淵行男君著「高山蝶」のために
のために
高山蝶が引合わせてくれた益友田淵さん。この無類の篤学者が、今回多年の高山蝶生態の研究を纒めて出版される。その意義は大きいが、特に私にとってうれしく、また感慨深い。というのは、日本アルプスの探検時代、たまたま私が発見の機を得た、クモマツマキチョウやタカネヒカゲが、主要な研究対象となっており、また君が四季にわたって高山を往来して、食草、卵、幼虫、蛹……と、探索し、飼育し、観察し、記録するという根気な、しかも報いられるよりも犠牲を要求される性質の、難事業をやり通したことは、好きなればこそで、その点似た経験を持つ私として、共感と喜悦が深いわけである。それでかつて田淵さんの牧の研究室を訪ねた際、私の高山蝶発見の状況や※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)話を物語ったのが、君の興味をひき、今度の本にあれを、と望まれるまま喜んで筆を執った次第である。
なにしろ明治四十三年という茫々半世紀の昔語りで、時の霞におぼろながら、感動の情景は今も皮膚にピチピチ蘇るのが不思議だ。当時の日本アルプスは未知の暗黒世界で、実測の地図も無く、記録は乏しく、世人は無関心。