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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

七 画すがた

俺はできるだけ彼の手助けがして見たい。今に彼がやってきたら、俺の胸の内に湧き上る、この夏雲のような心意気を、ぜひ何とかうまく、彼に伝えたいものだが……。

七 画すがた

峯の方から流れてくる、岩雲雀さんの朝の歌の、ひときわ美しい旋律に耳を洗いながら、しきりに俺がそんな事を考えつづけていると……狭霧を分けて、待ちわびた老画家が、昨日にも増して元気な姿を見せた。今さらのように俺は、胸のときめきをとどめ得ない。彼も息をはずませ、心地よげに頬を紅潮させつつ、例の如く帽子をぬいで、われわれに親密な挨拶をする。そして見るから張りのある物腰で、さっそく仕事の用意にかかった。しかも筆を染める前に、キッとした眼なざしで、穴の明くほど俺の方を見すえ、それを自分の画に移し、又こちらに向け……幾度かそんな事をくり返しては、ひとりうなずいている。

俺は俺で、自分の胸中を彼に通わせようと、かねて心は砕きながら、いざとなると、依然として自分が、思う存分、身を動かすこともならねば、また人間によく解るよう、口をきくこともかなわぬ……もどかしさに、ただヤキモキ気を苛つばかりだ。仕方がない――俺はせいぜい枝葉を、霧のあおりにまぎれぬほど、さまざまにそよがせ、露をハラハラと揺りこぼし、又うら枯れた枝を、おもむろに撓めたり、伸べたり、持ち前の芳香を