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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
七面山冬ごもりの記 ――胸奥山水抄――
彼は――大きな誤訳はないつもりだが、なかなかうまく訳せないところが多かったし、自分が買いかぶられているようで、気のさす部分もあり、又ふにおちぬ箇所も無いではないが、驚きと感激に包まれている現在、あえてそのままにしておく……と言っている。
なお、私は不思議な縁から、この姉妹作を入手することになったので、偃松の希望にもそうゆえんと考え、この「地域」誌上に公表することにした。ただし画の方は、すでに昨秋日本山岳画協会第十一回展(三越にて)に出陳された。昭和二十六年春 七葉道人識
七面山冬ごもりの記
――胸奥山水抄――
戦争のため、登山が思うに任せぬようになり、果ては爆撃で生命さえ危うくなると、かねて、わが胸の奥なる宮居に祀られた、山とその一類の姿が、いや増しに、さまざまの幻となり、夢となって、眼の前にちらめく。都会には珍らしい、薪の煙のしみじみと匂う時、警報が来襲機の針路に当る山の名を叫ぶたび、その幻像は物狂おしいまで、まざまざと。
防空壕に出入りする暇も惜しんで、私は物に憑かれたように、それを書きつけはじめた。過去の旅を反芻していると、老いを感ずる一方、また無限の逸興に駆られて、往時も昨日の如く新らしい。