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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
こうした、俺たちにとって比較的陰気な冬籠りも、例の恐ろしい雪崩の響きをキッカケに、パッと眼もくらみそうな光明世界の幕が開けて、胸をとどろかせながらアタフタしているところへ、今度はあの快活な、旅の小鳥さんたちが、続々と訪ねてきてくれる。俺たちの世界は、いよいよ陽気になる。鶯、めぼそ、萱くぐり、岩燕、岩ひばり……皆な生れついての音楽の妙手で、話好きで、そして何より山好きな、懐かしい親友ぞろいだ。それに去年ここで生れた、あどけない雛が、見ちがえるばかり、いっぱしの若鳥となって、親兄妹と翼を並べて戻ってくるのも嬉しくめでたい。見もしらぬ南国や海洋、さては人間界の消息まで、さまざまの珍らしい土産話は、一と夏かかっても聞きつくせないくらい。面白いばかりか、それは又見聞のせまいわれわれにとっては、たいへんな学問になる。つくづく鳥たちの境涯をうらやましくも思う。
だが俺たちは、あくまで山の子だ。下界に行く気はないし、又行けもせぬが、そうした宿命をかこつ料簡なぞ、さらさら持とうか。たといたまたま、気まぐれな人間の手で、入念に下界へ運ばれ、やたらに、珍らしいの、枝ぶりがいいのとほめそやされ、やれ盆栽だ、庭木だ、それ土目よ、肥料よ、とチヤホヤされても……ただもう眼が廻るやら、冷汗をかくやら、のぼせ上って、息が詰るばかりで、