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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
居ても立っても、到底いたたまれたものでなく、遅かれ早かれ、生命を棒に振ってしまうのが落ち……ときまっている。稀には多少生きのびるのもあるにしろ、まるで馬鹿みたいになって、ただ空恋しさの一念から腰が据わらず、偃松らしい姿も忘れてしまえば、勝手なもので、もう振りかえる人もなく、死に勝る生き恥をさらすだけの話……そんな悲劇も、時たま小鳥の口から伝えられる。
何もぜいたくを言うのではないが、性に合わないところではまったく駄目な、いたって融通のきかない、愚直と言おうか、よくよく世渡り下手に生れついた俺たちなのだろう。イヤ待てよ、――羽を持った仲間にだって、それそれ、わが雷鳥さんという、これはやさしい見かけによらず、雪が降ろうが、氷が張ろうが、寒かろうが、冷たかろうが、何が何と言おうが……ガンとして、里へは下りない、無類の一国者もあるのだから、頼もしかろう。
そればかりか、あれほど旅好きの小鳥さんたちでさえ――ここへ来ると、途端に不思議と気が若やいで、羽色が別もののようにきれいになるかと思えば、自分でもびっくりするほどのいい声が出るし、下界ではどうしても歌いこなせなかった難かしい曲が、苦もなくスラスラ歌える……と言って、喜んだり又怪しんだりもしている位だ。