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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

よそ目には、無分別な――と思うほど、激しく叩く。振り立てる頭の赤さが、周囲の沈んだ色調から、飛び抜けて眼を奪う。虫でも漁るのか、と思えば……不意に、キャ、キャ、キャ……と叫んで、羽音も荒々しく、どこへか姿を晦ます。声といい、形といい、しぐさといい、すべて、あたりはばからぬゆゆしさ、ものものしさ。それに引きかえ、フィーヨ、フィーヨ、フィーヨ、と、しおらしく鳴く鳥もある。うそかとも。遠くの方でも、それに答えてか、フィ、フィ、と絶え入りそうな声……

訪なふは啄木鳥かや雪の破れ扉

こうした中で、たまに風呂の案内。これはたいした馳走なのだ。裏口から、吹き抜きの長廊下を渡って、湯殿へ。納屋に隣って、小さな小判なりの据風呂に、鉄砲の炭火が赤い。それより、なお暗いほどの、豆ランプが、ぽつり、と一つ。うっかり裸かになって、沸き過ぎていたら、それこそ、事だ。隅の籠に、盛り上げてある、氷の大塊を、抱え込んで、うめるので……。氷は、裏の沢から、ぶっ欠いて運んできたもの。それが尋常の氷でない。栂の実とか、唐檜の葉、枯枝ごとのさるおがせなんど、さまざまに、草入水晶そっくり、美しく透けて見える……。