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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

天女ヶ原の疎林と十勝岳の挿図

○

この尊ぶべき山に今や開発計画が進められ、詳細を私は知らないけれど、なんでもバス道路が層雲峡から赤岳へと延長され、将来は大雪山の中心部をユコマンペツへ横断する計画さえある……と聞いた時、私は愕然とした。ここばかりではないが、バスの登山こそ、およそ邪道の骨頂である。もう乗鞍だけでたくさんだ。老人や婦人子供のため――などとは企業家の空念仏にすぎまい。婦人は特に弱者扱いすべきでなく、老人は私もその一人としていさぎよく辞退したい。子供に至っては、そんな物で登山することを覚えては、前途が思いやられる。この狭い国土で若い人たちが足を延ばす場所は、山より外に無いではないか、ましてや大雪山は足ざわりのいかにも柔かい、もったいないほど歩きよい山なのである。これをしも歩けない、あるいは歩かないというのなら、それは山を鑑賞する資格を持たない者で、国をあげて病人となり、民族の前途は滅亡の外道がなかろう。

バスの山登りには私はまったく賛成できないが、開発を無用とはしない。それには奥地の三股、石狩岳、あるいは十勝岳などへの歩道や、トムラウシ、化雲、十勝方面における小屋の、新設、改善こそ最も望ましく、それ以上の便利化は肝心の大雪山の価値を傷つけ、やがて民族の自殺行為であることを、強く識者