轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
軽く胸を圧迫して息を止める操作が、こんなにむずかしいのも初めてだ。どうやら鱗片もあまり落さず、手帖を破って折った三角紙に収めた時は、長い吐息とともに、午近い陽の下、全身冷汗でビッショリなのに気がついた。同行の影は無い。痺れた脚に鞭打って、種池の手前で追いつく。何していたんだ?――待ちあぐんだらしい同僚の問いに、それどころか、大変な獲物だぞ――と紙包みを見せて、外国の蝶譜で見たような気もするが、日本産としては初めての蝶だ――と胸を張る。本当かい?――と、しかし工学士の辻本さんは半信半疑の態だ。
その後私はとかくこの蝶が気になり、休むたびにそれを取り出して見た。よく蝶が生き返って翅をすり剥すことがあるからだが。しまいに癖になり、夜営などでは、悠々それを楽しんだ。見れば見るほど美しい。裏面の青い雲紋などツマキ蝶によく似ているが、あのように翅の先端が鉤状にとがらず、円味をおびて橙黄の部分が広く、全体も大きく強い。こんな美しい蝶が今まで人に知られなかったとは……。同行はこれに「虎ノ子」の仇名をつけた。「虎ノ子」は無事か?――などとひやかす。ところが、これが無事ではすまなかった。