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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

四月二十一日

四月二十二日

桜は私もYも余りこのまない。

四月二十一日(火曜)

夜、安成二郎来。外国電報で、ウィンの郊外に居る久野久子氏がホテルの三階からとび降りて自殺未遂をしたと云う。自分手がつめたくなった。先生は、自動車に轢かれてから言語障害を生じたようであった。音楽も愛すのに我を忘れうっとり身を投じるのではなく、征服的にかかって行かれた。神経衰弱で、高いところに居、ふらふらとなったのだろうとY、云う。そうかもしれず。どっち道腕など怪我し、なおられてあれ以上の不具となったらどうして生きて行かれるか。ショックを受けた。

仕事、やっとかかれる。一終り

〔欄外に〕

ボリソフより来た本の中にチェホフが妻君にやった手紙あり、中に、妻を、ソバアカ、ソバアカと愛して呼んで居る。ヤー チェベア、ソバアカ、オーチェン リブリュー〔私はお前を大変愛している〕。

四月二十二日(水曜)

仕事六枚うれし。

夕方母上来。無電が到頭久野氏死亡をつたえた由。到頭、到頭! 深い感慨あり。今幸仕事が出来て居るからよいがさもないと自分はかなり打撃を受けたと思う。子供の時分の思い出が甦る。始めて母上と行ったとき、あの部屋、教則本、ヴェートウヴェンのソナタ。