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にっき
日記
宮本 百合子
11 一九二五年(大正十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页
三月二日
三月三日
ゆっくり夕飯をし愉快ではあったが、夜本を片づける積りであった予定はくずれる。
折角よい家だのに、差配の家の工場、となりのおくれ髪どめ作りの工場にはさまれて居るのを発見。
〔欄外に〕
昨夜Y、いろいろの話のことから、私に情熱は在るが愛の深さは自分より劣ると云った。
その言葉忘られず。
自分の結婚したやり方など全く情熱的であった。そしてそれを完成されなかったのは愛の不足と云えなくもない点あり。実に忘られない一句。
三月二日(月曜)
本箱にすっかり入れてしまうとこの位のものかと思う。出て居るときの沢山さ!
今夜でやっと片がついた。疲れたこと、疲れたこと。御話にならず。Y、殆ど嘔吐を催す。自分もまけず劣らずだ。生憎右手の工場で電気のエンジンを廻し出し、そのブーブーという音頭に響きやり切れず。夕刻やんで吻っとした。どうか毎日一日中やってくれるのでないことを祈る。
〔欄外に〕
心の問題を話しどうしてYがAでなかったかと悲し。この悲しみは深い。自分は、Aにあれだけ傾倒した。Yだけの鋭さを若しAが持って居てくれたら、私はよくなれ、互の生活に安ぜられたのであったのに。
三月三日(火曜)