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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

三月二十五日

三月二十六日

一つの原因は、Aに超人間的なつよさ、堂々さ、寛大さを求めたということ、二つには、彼がその淋しさやなにかを率直に云ってくれず何だか変にして居るのがいやで、彼に同情を当然持つべきときさえ持ち得なかった点。彼も苦しい心持を多く味ったのだ!

三月二十五日(水曜)

とし子こんどは珍しく働く。有難い。が朝やかましくていや。朝飯後、二階で校正を手つだい乍ら、青木健作の「一筋の道」をよむ。

成程、一生懸命に書いて居ることは判る。密度にムラなし。然しカンジンのところで、何か足りず、描写は平凡になってしまい、何も感銘出来ず。夜、『婦人公論』に送る自分のスケッチを描く。この二日ばかり「ゲーテとの対話」中デモニッシュ(悪霊的)ということについてゲーテの云って居ること、思いつづけて居る形だ。この力、この力、このデモニッシュなものに支配されること――支配される丈の素因の内在して居るか居ないかが、芸術家にとっては大問題だ。

デモンにつかれたものに丈ある感覚――芸術に対しての触手――、なりひびき揺り動かす何ものか。

三月二十六日(木曜)曇

Yと一緒に大曲りまで出かけ、私、伝通院近くの代書人のところにゆく。