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にっき

日記

宮本 百合子

11 一九二五年(大正十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页

青空文庫

三月一日

一緒に昨夜の家を見にゆく。門内の様子もよく、庭も、間どりもまあよく、思いがけない掘出しものと云える。この間じゅう彼那に気をつけて居たのになく、こうして不意とよいのがある。所有主上海に居る由、ちっとも貸家フシンでないから心持よいと云ったらない。青山の家など80でフロバさえなかった。建かたもわるく庭もなかった。これは70、しきたった三つ。本当にうれし。自分の家の出来たのはうれし。うれし。のびのびし、さっそうとする。Y、いそいで家にかえり今日半分だけ引越すことにする。実に思いがけないことであった。

〔欄外に〕

二月下旬、春の先駆で天候不順。よく晴れて居るが北風激しく寒いこと夥し。昨夜の雪が、一吹き風が吹く毎にパアット吹雪のようにとびちって顔や肩にかかる。しかし雨だれの音はやさしい。道路表面がとけ下が凍って居る。

三月一日(日曜)

自分仕事があるから机と椅子だけ引越し、すぐ仕事にかかる筈であったが、一つ家でそれは出来ず。思い切ってすっかり本を運んでしまった。大体手不足であったから、女三人へとへとになる。夕方秀雄氏、京都からの、このわた、下駄、松葉カレイをお土産で来訪。