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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

二月十七日

先によんだ時とは受け方がまるで違う。自分の方の準備の如何によって、よまれる本の価値は上りもすれば下りもする。本の選択などと云うことも、そこを標準にして行くべきではないのだろうか。或人にとっていい本、或は何でもない本は、他の或人にとって、大きな動揺の基ともなるべきものである。河村明子氏来訪。孤雁氏の書状を見せてくれる。写真を送ってやるから、くれろと云われたが、自分はそんなことはしてもらわずといいような心持がする。強いて写真を送ってもらったところで、俗に云う、はじまらないことなのだ。あの人は大変いい頭を持って居る。が。

二月十七日(土曜)

春と冬が、混り合って世界中に漲って居る。又妙な心持になるときが来た。これから四月近くまではいやだ。寒いような、引きしまったような心持のかげに、淫蕩的な熱情がムズムズして居るような心持がする。五時半から、国民美術の講演会へ行って見る。古田中夫人、高松、浜岡、君塚等に会う。田辺氏の西洋音楽の話は大変に面白かった。画に於ける未来派のような最近の曲と云うのは、他のどれよりも、やはり色調の強いものだ。感じは、或程度まで共鳴することが出来る。