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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

一月四日

ほんとに不愉快だった。たまらなかったので、ろくに話しないで帰ってしまった。

久米さんが来たそうだ。かえる一寸まえまで居たそうだのに。会いたかった。大変会いたかった。又今度来なさればいい。久振りで話もききたい。

本田の道っちゃんが来た。相変らず、互に苦しい、周囲の総てを苦しませることほか芸のない、相変らずを持ちつづけて居る。もう三十を越す位になって居るのに、あてつけのように独りで居られてはたまらない。殆ど重荷になって来る。ああ云う風では自分でもたまるまいと思う。生きて居るには、生きて居る丈のわけがある筈だろう。

一月四日

両親弟達、芝御祖母様、帝劇へ行らっしゃる。私が留守をして居ると泉沢氏が来る。

“お父さんは相変らず、繁盛か?”と云って鼻汁をすすり上げて、しびれて居ると云う足をムズムズとさせた。お寿司を食べないと云うのを出したら、一口たべては、美味い、腹がへって居るのでと、云訳らしく云う。可哀そうになってしまった。下島さんとにて居る。手をブル、ブルさせるところ、妙に弱々しいところ、臆病なところ、生活の敗残者に共通なみじめさと、陰気と、卑劣さが具って居る。