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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

三月十七日

一寸ハッとすることを、平気でお云いなさる。あまり感じはよくない。どっか上の方でききながして、つっこめない、始終逃げて居るところを持って居る人だ。先生は大変御機嫌がよかった。いろいろ御はなしなさる。丁度創作が順調に、しかも、可なり満足すべき勢で進んで行くとき、誰でも持つ活気と、心の奥からの喜びにみちて、機嫌よくすまいとしてもせずには居られないような状態に被居っしゃった。「生きるか死ぬかの苦」が必要なことを仰云った。七月ごろにかけることを御話する。私は先生をわきから見て居て大変嬉しい。けれども大変苦痛な心持になった。何故そうだったのか? ときはドシドシとすぎて行く。

三月十七日(土曜)

道男と十二時ので立つ。もう発車に間もないころ、古田中の奥さんが女中と子供をつれて送って来てくれる。妙にサンチマンタルになって居なすったので、少し気の毒だった。送られることをさほどよろこばない自分は、冷淡なのか? 或は送られるに堪え得ないほど弱いのか? とにかく自分は、どこに行くのにも送られるのはいやだ。

汽車はすいて居たが、段々こんで来た。白河位から雪がそこここに消えのこって居て、北国らしい。