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にっき
日記
宮本 百合子
04 一九一七年(大正六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页
一月二日
いやだ。何と云っていいか分らないからいやなのだ。何だか可哀そうだから、あの部屋へ行くのにさえ遠慮をして居たのに、当人は何とも思わないと云う程平気だときいて変な心持がした。
此の元旦は、今までになかった心の経験をした。それは、此れから先の一年に対して、つよい愛惜を感じたことである。今年はいつものように、努力するとか、勉強するとか云う言葉が自分に許されないほどの緊張を感じて居る。十代の最後の一年に対してどの点から云っても、自分は忠実でなければならないと思うと、妙な哀感が湧いて来た。
千葉先生から葉書を下すって、三日に御在宅だと云う。
一月二日
珍らしく雪が降った。が、同じ白い雪にしても、東京の雪と、東北の雪の感じはまるで、違う。それは一方は、荒涼とした曠野に――山の峯から、向うの村の杉並まで見渡せる広い眼界に、一面かたくしめつけたおからのような雪が、降るのだから、全く圧迫される、愉快な感じはどこにもない。が、東京では、平常はどっちかと云えば、決して美くしいとは云われない瓦屋根や、ぼろな垣根やを、まるで、自分の庭丈に降るようにせまい、先ず、じき消えると云う感じを持たせられて居る白いものに降って来られると、かなり遊戯心を起させられる。