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にっき

日記

宮本 百合子

04 一九一七年(大正六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,447 字 · 76 页

青空文庫

七月七日

いろいろ下らないことを云って居るとき、彼の顔は若く、さも苦労がなさそうであるけれども、息子のことを云い出すときは、何だかいかにも父親らしい表情をする。平常、何でもなさそうにして居る丈そう云うときにはしみじみと気の毒な心持が起る。あしたかえるつもりにする。東京からボンボンとアイボリーと、雑誌二つ来る。「ト研究」の中の、鑓田芳花と云う人の論は、妙な、一寸反駁論をかきたくなるようなものであった。

七月七日(土曜)

「哲学概論」並びに「綱要」をよむ。哲学がいかに頭に影響を及ぼすかを思うと驚くべきものがある。桑木博士の頭のはっきりさが羨ましいように感じられるのであった。今日はよほど浪があれたと見えて、館山からの船がとまった。主人が、此の村の権力争いについて、話してくれる。面白い。なかなか複雑した事件で、よくききたかったが、いそがしくて、中途否、あらましでお止めがいかにも残念だったが、あまり追究すると、不安がって話すまいかと思ってひかえる。夜、高木氏が五目を教えてくれる。あんなものでもなかなか頭をこまかく、それで居て広い範囲に働かせるようにさせる。昼間行った、弘法大師の薯井戸は、いかにも、あの時代として、法師の科学的智識の進んで居たことを証明するものであるとともに、あれ位の方便が産んだ効果を面白く思う。