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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

今年はどんなことをしましょう。寿江子は今日、お話ししたようにどこかへ行きます。私が脇でだんだん回復してくると寿江子の様な長年の持病持ちは神経を変に刺激されて反感を感じるのだそうです。自分の体の悪さばかり痛切に感じるのだそうです。疲れたことも疲れたのだし、私のとこの横に終日ついてその気分であれこれ刺激を受けるのも切ないしするから、ひと苦面をしてともかく暫らく気分を変えさせます。私のこの人の年の生活なんかを考えると、他人の世話をやかせて自分の気分を始末するということも変に思われますが、体が弱いという事実と、そこから生じている自分の習慣は一朝になおらないものでしょう。勝気な女の子が病気をすると、多賀ちゃんにしろ、自分の気持を支配して行くことが反って一苦労らしくみえますね。十七日には、私は大変珍らしいものをお目にかけようと思って、盛んにこっそりもくろんでおります。一寸想像がお出来にならないでしょう。勿論この節ですから、食べるものでも着るものでもありませんけれども。あと何行? もう三行よ。さあ何を書きましょう! 今は白い紙の反射がまぶしいから、例の色レンズをかけて物々しい姿です。