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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

09 一九四二年(昭和十七年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,952 字 · 130 页

青空文庫

(何んで早く調べないんだろう、と思っていらっしゃるでしょうね、いやんなっちゃうなあ、とペンさんの歎息)本当にさあ、と言いながらペンさんはさかんにアゴをつまみます。寿江子は今鹿沢にいます。浅間の景色は美しいそうですが、この間鬼気が迫るような手紙を寄越して、私は吃驚して小包をこしらえてちょいちょいしたものを送りました。晩年の母の厭世的な、人の善意をそのままに受けられない心理が、寿江子に現われていて、体の悪さが推察されます。困ったものですが、まあ、あちらにタンノウするだけいて、少しは恢復してもらうしかありません。インシュリンもないのだし。ああいう病気は本当に哀れです。親が無責任だなどと書いてきていました。自分を生んだということについてよ。心持がああいう状態だとそういう消極な考え方にきっと陥るのです。富雄さんには小包を送りました。うちの廊下の衣紋竿には国男さんの冬のトンビがかかっていて、いつの夜中にでもそれ! と言って出掛けられるようにしてありますが、赤ちゃんは悠々としています。お乳は出そうです。どんな骨折りをしても、今年はお乳がなければなりません。母子の為に。