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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
裸一貫
「猫の墓です。こっちの方は、夫婦猫なので、別にして、花を供えてやりました」
金五郎を見ると、マンは、そういって、また、手ばなしで、おんおんと、泣いた。
裸一貫
「おい、あの女、とんと、ここらでは見かけん女じゃが、どこの者じゃろか?」
「洋装のハイカラ美人なんて、一年に、一ぺんも見たことないなあ」
「しかも、二人もな」
「西洋の活動写真のごと、あるのう」
「声かけてみようか」
「止めちょけ。ハイカラさんが、おれたちのようなゴンゾを、相手にするもんか」
海をへだてて、巌流島が、盆景の島のように、小さく、こじんまりと見える。先ごろ、この北九州を吹き荒らした、二百二十日の烈風で折れたらしく、島の中心にある丘の一本松が、タコの足のような根をあらわにして、横倒しになっている。
その松の根に、ハンカチをしいて、二人の女が腰をかけている。どちらも、似たような白のドレスで、黒い手袋をはめ、桃色と緑とのパラソルをさしている。二人の視線は、関門海峡をへだてた小倉の延命寺燈台の方角にそそがれ、ときどき、顔見あわせて、たのしげに、笑いさんざめく。
かたわらに、中年の厚司男が立っていて、しきりと、方々を指さしながら、口を動かしているのは、このあたりの風景や史跡を説明しているらしい。