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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

誰かが、幇間のような態度にあてつけて、そういったので、くすくすと、笑いが起った。

「あんた、ちょいと」

桃色のパラソルをさした方の女が、マンのすぐ前に来て、蓮っ葉に、呼びかけた。

マンは、びっくりして、

「はい……?」

「あんたはん、珍しいもの、持ってやはったらしいけど、それ、あてに見せてんか?」

「なんでしょう?」

「なんや、こう、手に持って、パッと火のつく、小さな機械やったわ。煙草のみはるのに、煙管に、マッチとは違うた、その機械でつけはったでっしゃろ?」

「懐中ランプのことじゃよ」

と、新之助が、横から、マンにいった。

マンは、腰にぶら下げていた麻袋から、懐中ランプを取りだした。

「これでしょうか?」

女は、受けとると、銀色の小箱を、子供のようにひねくりながら、もう一人の女に示した。

どちらも、年配は二十二三、似たような丸顔である。桃色パラソルの方は、眼尻が下り、唇がうすく、軽薄で、厚顔らしいが、緑色傘の女は、下ぶくれで、眼元が涼しく、唇にしまりがあり、どこか落ちついているところがあった。唇の右下にある大きな黒子が、昆虫が止まっているように見える。妙に、色っぽい。