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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そんとき、大変じゃろうけん、余分は戻す」
「そうですか」
「おおきに。それじゃあ、これで……」
「待ちなさい。今時分、表をうろついとったら、怪しまれる。さっきも、巡査さんが廻りよった。あたしが、送って行ってあげる」
マンは、泥棒とつれだって、また、月光の街に出た。
「どっちの方角に、帰りなさる?」
「さあ、どっちでもええが、……ステンショの方にでも行こか」
停車場への曲り角で、巡査に出逢った。カンテラをさげている。つかつかと、寄って来た。
「おいおい、コラ」
マンは、相手の顔を見て、
「安木の旦那さん、あたしです」
「なんだ、玉井のおかみさんか。今ごろ、どこへ?」
「親戚の人が来ましてね。お腹がすいたもんで、うどんでも食べようかと思うて……」
町角に、夜泣きうどんの提灯が見えるのに気づいて、マンは、とっさに、そんな出まかせをいった。
「そうかい、秋の夜は腹が減るもんだからなあ。行っておいで」
巡査が同じ方向に歩くので、仕方なく、夜泣きうどん屋に、立ち寄った。巡査は、カンテラをふりながら、サーベルと靴の音を派手にさせて、行ってしまった。
「「当り矢」さん、狐うどん、二杯、下さいな」