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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

はじめから、新之助の方には殺意などなく、追いつめられた果ての兇行で、正当防衛的な意味も多少あったために、刑は軽かった。君香は、自分を「露探」と呼んだという、つまらないことがきっかけで、半死半生の目にあった森新之助を、はじめは気の毒に思って、見舞に行ったり、同情したりしていたのだが、いつか、それが愛情に変化して、殺人事件にまで発展してしまったわけである。

「新さんが――絶対に、このこと、玉井に知らせてくれるな。……って、いやはるもんやさかい、これまで隠して居りましたのやけど、今度、どないしても、相談に乗って貰わんならんことが、いくつも出来ましたよって、お邪魔に上りました」

「あたしとこに、相談というのは?……」

「新之助はんが、もう四五日したら、牢屋から出やはります。まだ刑期はすまへんのやけど、成績がよろしいよって、仮出獄の恩典で、出して貰えるのだす。それで、その身元引請人に、玉井はんになって貰おうと思て。……新之助さんがいやはりました――これまでは隠して居ったけんど、娑婆に出たら、やっぱり、玉井金五郎はんの弟分になって、万事、やって行きたい。いっぺん、兄貴をつれて、牢屋に面会に来てくれたら、ええなあ。