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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
活溌に、荷役が、開始された。
この種の仕事に馴れない大川時次郎は、艀の中で、「入れ鍬」をした。スコップで、籠に、石炭を入れる役である。女の領分だ。しかし、元来が百姓で、力はあるので、ちょっとの間に、要領をおぼえると、女の三倍は能率をあげた。
しかし、時次郎の関心は、無論、そんな、仕事を憶えることにはない。彼の胸中には、これまでに見た恋敵の言動が、一杯に、つまっている。
時次郎は、息苦しい。それは、肉体の過動から来るものではなくて、明らかに、精神の昏迷から、来ているものであった。
(玉井金五郎という男は、おれの考えていたような、飲んだくれの、ばくち打ちの、ゴロツキとは、すこし、違うようじゃ)
時次郎にとっては、マンを独占している男が、醜男で、グウタラで、無能で、なんの取り柄もないヤクザ者であった方が、はるかに、よいのであった。前夜、マンと、蒲団のことで、押し問答をしているところへ、突然、あらわれ、彫青の肌をむきだして、「打ち斬ってくれる」といったときには、金五郎を怖れる気持は、すこしもなかった。ところが、今、そのゴロツキが、なにをしたかを、終始、目撃した時次郎は、しだいに、金五郎を怖れる気持を生じていた。