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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「ふウン」

「あいつ」と、「中学生」の谷俊次が、「指ばっかり切っとるなあ。左手の小指も、薬指も、先がありゃせん。そのうちに、どの指も、第一関節から先が無うなって、生姜のような手になるぞ」

その言葉で、一座は、どっと笑ったが、時次郎には、なんの意味なのか、わからなかった。きょとんとした顔つきで、

「どがあなわけで、指なんか切るとですか?」

源十が、

「ドジを踏んだお詫びに、指を切って、こらえて貰うんじゃよ」

「ドジ、というのは?」

「たとえば、今度のように、こっちの仕事を取り損うたり、ばくち場で、インチキをして抑えられたり、親分の顔をつぶすようなことをしたり、選挙の運動をして、候補者を落選させたり、……それから、間男を見つけられたり……」

「間男、も、ですか?」

「そうよ」

時次郎は、びっくりした顔になって、金五郎を、見た。マンを、見た。二人の顔を、かわるがわる、見くらべた。

「ワッハッハッハッ」

と、金五郎が笑いだした。時次郎はひやっとした。

「広島の客人は、まるきり、自分が間男したみたいな、心配そうな顔しとるなあ。それとも、広島で、間男でもして、逃げて来たのかね?」