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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
食事になると、自然に、まっさきに、前日の金比羅神社での喧嘩話が出た。
お京は黙っていたが、おしゃべりで有名な染奴が、話に尾鰭をつけて、身ぶり手まね入りで、報告した。
「悪い奴と、出入が出来たなあ」
新之助は、心配顔である。
「ほんまに」君香も、眉をよせて、「金さんて、損な性質だすな。そないなうるさい掛けあい場やったら、黙って、避けて通りはったらええやろに。触らぬ神に祟りなし――やないか。そやけど、金さんは、それが出来はらん人や。祟りが来る、とわかりきったるのに、黙って居られん人や」
話していると、仕込みの娘が、
「玉井はんが、来やはりました」
と、告げに来た。
「ちょっと、あたし、お師匠さんとこ、行って参りますわ」
お京は、あわてて、立った。君香が、びっくりしたように、
「お師匠はんとこ、どないしやはったん?」
「春の温習会のお稽古、もうすこし、見て貰っておこうと思いますので……」
「阿呆らし。そないなこと、朝早よから騒ぐこた、あらへん。今、うちの旦那はんの兄貴分のひとが、来やはる。お京はん、まだ、逢うたことあらへんのやろ? 玉井金五郎はん、いっぺん、逢うといて」