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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「喧嘩というほどのことはないよ。運動会みたよなもんたい」
「あんたは、その気でも、向こうは麻疹犬じゃ。日ごろから、江崎は、若松で、玉井組がのして来たのを心よう思うちょらんけ、うるさいことに、なりゃせんな?」
「こっちは、喧嘩が商売じゃない。仕事師じゃけ、あんなのには、相手にならん」
「おれたち、昔、彦島で、吉田親分から、江崎満吉との大喧嘩の話、聞かせて貰うたことがあったなあ。大嵐の晩のはげしい出入りの一件じゃった。江崎も、今はあのときほどの勢はないらしいんけんど、気をつけんと、馬鹿みるばい」
「ああ、おおきに。じゃが、まあ、心配なことはないよ。……そら、そうと、ちょっと、思いついたことがあって来た。これから、聯合組に行くとこじゃが、こないだ買うた刀を二本、出してみんな? 本阿弥の直弟子の、大層上手な鑑定家が来とるそうな。おれも、助広を鑑て貰おうかと思うちょる。お前は自慢しとったけど、おれは、どうも、お前のは備前物とは思われん。一杯、食わされちょる。一緒に鑑定して貰うてやるけ、おれにあずけなさい」
「そうかい、そんなら、頼もう」
前にも、そんなことがあったし、新之助は、格別、疑う気持もなしに、奥の部屋から持ちだして来た日本刀を、二本、無造作に、金五郎に、渡した。