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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
ひと寝入りした後、子分たちの朝御飯を作ってから、早朝、出発するつもりだった。
しかし、なかなか、眠ることが出来ないでいると、十二時を打ってから、表の格子戸を、たたく音がした。金五郎らしい。
「マン、開けてくれ」
と、怒鳴っている。
若松に住みついてから、これまで、金五郎は、まだ、家をあけたことがない。したがって、締めだされたこともない。交際で、どんなに遅くなっても、かならず帰って来た。マンも、一時が打っても、二時が打っても、表を掛けずに、待つのが習慣になっていた。
しかし、今夜は、十二時前に、戸じまりをしたのである。
「こらあ、どうして、締めるか。……開けんかあ」
がたがたと、格子戸を鳴らしながら、金五郎は、不服らしげに、喚いている。
マンは、蒲団の中で、息を殺していた。誰かが梯子段を鳴らして、二階から、降りて行くようである。畳を踏む足音が、玄関の方に出て、
「オヤジさんですか?」
時次郎だった。
「おれじゃよ」
「今、開けます」
内から掛けた鍵がはずされると、はげしく、格子戸が開いた。投げつける語調で、
「帰ることがわかっとるのに、何故、掛けるか? マンは、居らんとか?」