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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

そう答えると、うれしさで、息がつまりそうだった。ぼろぼろと、堰を切ったように、マンの眼から、大粒の涙があふれ落ちた。

秋風が立ちはじめるころになって、金五郎は退院することが出来た。無論、まだ仕事をすることなどは思いも寄らなかったけれども、杖をつけば歩けるほどになったので、自宅で静養することにしたのである。

大よろこびの大庭春吉は、持ち前の蛭子顔を、さらににこにここ綻ばせて、病院長の浜野博士に、礼を述べた。

「ありがとうございました。玉井の命を取りとめたのも、みんな先生のおかげです。この御恩は、終生、忘れません。玉井に代って、お礼を申します」

「いや」と、温厚な浜野博士は、当惑した面持で、「どうも、変ですよ。玉井さんの命を救ったのは、僕ではないようですな。この間も申しあげたように、普通の者だったら、あれだけの傷を受けて、三日とは生きて居られませんよ。即死するでしょうね。おどろいた頑強さです。不死身という感じを受けました」

「不死身――ああ、そういえば、昔も似たようなことがありましたよ。もう三年ほど前になりますかな?……門司で、大層、上海コレラが流行ったことがあるでしょう?」