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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「オヤジ、サーカスにつれて行って下さい」

一週間も前から、「中学生」の俊次は、金五郎にねだっていた。

金五郎も、もう、杖なしで自由に歩けるようになっていたので、

「今年は、おれの快気祝いを兼ねて、玉井組全部、「蛭子座」に坐ろうと思うとる。サーカスでも、ロクロ首でも、八幡の藪しらべでも、なんでも、つれて行ってやるぞ」

上機嫌で、そんなことをいった。

祭の第一日目に、早朝から、「蛭子座」が開かれる。社殿とは別に建てられた広い拝殿で、参拝者が座につく。エビと鯛つきの膳で、神酒をのみ、打ち込みをして、縁起を祝うのである。希望者が多いので、なかなかその資格が得られないのだが、金五郎は、なんとかして、今年は玉井組全員、「蛭子座」に就きたいと考えていた。

「マン、お前も坐れよ」

「さあ……?」マンは、小首をひねって、「ウフフ……、こんなドン腹で、……」

「ドン腹だって、恥かしいことあるもんか」

「恥かしいことはないけんど、「蛭子座」のまん中で、産気づきでもしたら、大きな大事やわ」

「なお、めでたいじゃないか。産婆さんを雇うで、隣りに置いといてやるけ、お前も来い」

「そんなこと、……」