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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
第二部
大都会
「これまでも大変じゃったけど、これからが、一層、大変よ」
「おれも、そう思うちょる」
大正三年四月一日、若松に、市制が布かれた。ときに、戸数六二五八、人口三七三九三。因みに、若松村が若松町になったのは、明治二十四年三月一日、戸数八八一、人口三一三一。明治五年には若松村は戸数二〇、人口五八〇の一漁村にすぎなかった。
市制施行祝典が盛大に催された。
玉井金五郎、三十五歳。
同マン、三十一歳。
同勝則、九歳。
第二部
大都会
「東京、……東京……」
急行列車は、プラット・フォームに入った。
乗客がぞろぞろ降りる。長旅の疲れを見せている誰の顔にも、ほっとした色があった。
若松市会議員の一行十人も、それぞれの荷物を持って、二等車から降りた。
金五郎は、二等車などに乗ったのは生まれてはじめてである。三等車だと、自分の家のようで気楽だが、二等車は身分ちがいの他人の屋敷にいるようで落ちつかない。しかし、今度の視察旅行は官費であるし、自分一人の勝手は許されなかった。
「井上君、くたぶれたろう?」
隣りを歩く井上安五郎に、声をかけた。安五郎は、瀟洒な洋服姿で、赤い革カバンを下げている。