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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
浅黒い顔に、若いころから、金魚といわれた特徴のある眼が大きい。
「すこし腰が痛くなった。九州から東京は遠いなあ。昔の殿様はこの長道を歩いて、参覲交代しよったと思うと、あきれてしまうよ」
「二ヶ月くらい、かかるじゃろな」
そんな話をして笑いながら、地下道を降って行くと、
「玉井君」
と、呼ばれた。
友田喜造であった。鳶のような眼は、年をとるにしたがって、いよいよ鋭さを増して、その底に、さらに、陰険で狡猾な色が露骨に光っている。新調したらしい縹の背広を着ているが、着なれないとみえて、どこかに借りもののようなところがある。金時計の金鎖をチョッキにのぞかせ、眼鏡も金縁、ステッキの握りも金。
洋服といえば、金五郎も、自分の背広が、なんだかまだ板につかない。「馬子にも衣裳」というけれども、沖仲仕や、女郎屋のおやじ、バクチ打ち、ゴロツキ、石炭ブローカー、などが、三ツ揃いの背広を着、靴をはいてすましているのがおかしくてならなかった。
「なんですか?」
ふりむくと、
「君に、今夜、どうしても話して置かにゃならんことがある。君は、どうも、今度の上京をええことにして、怪しからんことを考えとるようにあるが。