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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
腕組みした友田喜造が、反りくりかえるような姿勢で、また、聞えよがしに、呟いた。
「まったくじゃ」
と、同党の仲間が相槌を打つ。
議長席に向かって、中央附近から、左側全部が民政党議員席だ。二百七十一名という絶対多数を占めている会心と傲岸の活気が、どの代議士の表情にも見える。吉田磯吉の精悍な顔にも、我が天下を誇る得意満面の色が掩いがたい。その右は、百七十三名の政友会席だが、中央後方に位置を占めている総裁犬養毅の老顔には、はげしい闘志が燃えている。厚い髭が白く、大きい眼がギョロギョロ光る。革新、無産、国同、無所属、等の代議士は、右隅に、ちまちまとかたまっている。正面には、民政党総裁、浜口雄幸首相、安達、俵、小泉、町田、などの諸閣僚。
拍手のうちに、田口書記官長が、議長席に就いた。
「議院法第二条第二項により、議長、副議長が勅任せられるまで、私が議長の職をとります。これより、衆議院規則により、議長、副議長候補の選挙を行います」
それから、氏名点呼にしたがって、投票の堂々めぐりがはじまった。議員連は、演壇につめかけて、グルグル廻る。
金五郎は、それを見ていて、蟻の行列を思いだした。