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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
あんたの気持、あたしには、ちゃあんと、わかっとる。要之助さんとの縁組なんて、あんたには無断で定めたことやし、……第一、あんな、にやけ男、あたし、大きらい。良ッちゃんが、あんな男の嫁さんになるかと、思うただけで、背中がゾコゾコッとするわ。蜈蚣と、蚯蚓と、毛虫とが、一緒に襟元に飛びこんだみたいよ。おう、気色が悪る。……良ッちゃん、あんな男に、指一本でも、触れさせるな」
蓮ッ葉な伝法調で、光三は、命令を降すように、いうのだった。
光丸は、うつむいて、道に散る雨の雫ばかり、見て歩いた。一重瞼の澄んだ眼に、うっすらと涙がたまっている。
「友田喜造さんが、仲介することになっとるらしいのね。あたしたち、政治のことなんて、さっぱり、わからんけど、どうして、あんなに、政党政党って、いうのか知らん?――民政党に非ずんば、人に非ず。……なんて、滅茶な話さ。人に非ずかなんか知らんけど、若松じゃあ、民政党に入らんことには、商売ひとつ、満足に出来やせん。料理屋組合でも、みんな民政党。うちのお父さんも、民政党。吉田親分さんの鼻息ばっかり、うかごうとる。阿呆らし。……な、良ッちゃんも、そう、思うやろ?」