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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「あたし、政治のことは、わからんわ」
「そりゃ、姉さんもわからんさ。じゃけど、五月の市会議員選挙に、うちのお父さんも出るつもりじゃけん、友田さんの機嫌を取っとるとよ。この間、友田さんがお父さんと話しとるのを聞いたわ――今度の選挙には、民政党から、十七人か十八人、立候補させて、全部、当選させる。議員は定員三十人じゃから、絶対多数になる。辻木君、あんたも落しやせん。そして、今度の選挙の第一目標は、うるさいゴロゴロ、玉井金五郎と井上安五郎とを、絶対、たたき落す。……なんて。……友田さんは、骨の髄から、玉井さんと井上さんとがきらいらしいのね。……その玉井さんの息子と、良ッちゃん、あんたとが恋仲なんて、面白いなあ」
光三は、妙にはしゃいで、一人で面白がっているけれども、光丸の顔の憂色は、深まるばかりだった。
「若松検番」の看板が、見えて来た。稽古場からの三味や鼓の音が、雨を縫って、かすかに聞える。
「良ッちゃん、あんた、先に、検番に行っといて。あたし、一ぺん家に帰って、猫置いて来る。あんたの扇を取って来てあげるわ。……さあ、猫をこっちにお出し」
光三は、光丸を検番に送りこむと、二匹の猫を抱いて、傘をさして、帰って行った。