轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
心が重く、足どりに力がなかったからである。
しかし、大した距離でもないので、いつか、自然に、原田邸の門前にたどりついていた。「若松新聞社」という、家には不似合な大きな看板がかかげられてある。それを見ながら、「玉井組」の半纏姿で、蝙蝠傘をさしている勝則は、しばらく、ためらっていて、案内を乞う勇気が出ないもののようだった。
原田雲井の方から、見つけられた。
「やあ、そこに居るとは、勝則君じゃなかな?」
「はあ」
と、仕方なしに、答えた。
「そげんとこで、なんごとば、しよるとな? 雨ん中に立っとらんで、早よ、内さい這入らんかな」
「失礼します」
崩れかけて傾いている、扉もない、門のようなものを潜って、玄関に通った。
蝙蝠傘をたたもうとすると、
「傘は、そのまま、そのまま。わが家は、雨の日は、内も外も同じこと。傘はさして、上がッつかアさい」
勝則も笑いだして、靴だけ脱いだ。傘の方はよく雫を切ってから、また、さして、座敷に上った。
長屋の一軒で、六畳、四畳半、三畳、の三間ある平屋だが、その荒廃のさまは空家同然といってよい。調度類はほとんどなく、襖、障子は破れ放題、ガラス戸のガラスも、満足なのは、幾枚もない。